甲状腺疾患について

甲状腺疾患とは

甲状腺とは、首、のど仏の下に位置する20g程の蝶が翅を広げたような形をした小さい臓器です。
そこから分泌される甲状腺ホルモンは食物から摂取されるヨードから作られ、簡単にいえば新陳代謝を良くする役目をもっています。

脳にある視床下部から刺激を受けた下垂体から放出されるホルモン(甲状腺刺激ホルモン(TSH))により、甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4))が分泌されます。
甲状腺は女性に多い病気ですが、男性にいないというわけではありません。また単に大きい(腫大している)という方も含めるとかなり多くの方が異常を指摘されることになります。

甲状腺の病気は、働きに問題がある場合と構造に問題がある場合に分けられます。

働きに問題がある場合

甲状腺のホルモンに異常がある場合です。主に採血検査でわかります。ホルモンの分泌が過剰になった状態を甲状腺機能亢進症、低下した状態を甲状腺機能低下症といいます。これらは状態をしめすものであり、治療は疾患によりそれぞれ異なります。

構造に問題がある場合

甲状腺が大きく腫れている(腫大)、中にしこり(腫瘍)ができている場合です。主に超音波検査でわかります。しこりだから悪性、しこりだから癌と言うわけではありません。超音波画像から判断し、必要に応じて二次検査をする事もあります。

甲状腺疾患治療について

バセドウ病

甲状腺機能亢進症をきたす代表的疾患で、若い女性に多く発症します。ときどき著名人が告白したりして有名な疾患です。数百人に一人と言われ、自己免疫による事が原因と言われています。簡単にいえば、脳からの刺激によって働くはずの甲状腺が、自己抗体(自分の物であるのに外敵として攻撃してしまう物)によって刺激され続けるため、ホルモン分泌が過剰になってしまう病気です。

甲状腺ホルモンが過剰になると、汗をかく、手が振るえる、動悸がする、脈が速い、イライラする、甲状腺が腫れているといった症状から体重が急に減った、目がとびでてきた(眼球突出)、下痢が続くといった多彩な症状が現れます。
これらすべてが出現するというわけではありません。新陳代謝を良くするホルモンが多くなるので、サウナ風呂に入ったような、100m走を走った後のような状態に近いかもしれません。
ただし、この状態が長く続くと、心房細動という不整脈を生じたりして心臓がバテテしまい、心不全を起こす事が高齢者を中心に見られます。ほとんどの方が外来通院で落ち着く病気ですが、状態によっては緊急入院が必要になることもあります。

診断は、採血と超音波検査でほぼ可能です。確定診断には1週間程度必要ですが、病状によっては当日から治療を開始するケースもあります。

治療は大きく3つ、薬物治療、手術治療、放射線治療があります。それぞれ一長一短があります。わが国ではまず薬物治療が選択し、薬では効果が不十分な場合や副作用がでてしまう場合に後2者からいずれかを選択するケースが多いようです。

薬物治療

長所は薬を飲むだけで済む事です。短所は、再燃を繰り返したりして、治療経過が長くなる事、一定期間の割合で採血を繰り返す事、また薬による副作用が現れる場合があることです。メチマゾール(メルカゾール®)またはプロプルチオウラシル(プロパジール®・チウラジール®)があり、ほとんどが前者から選択されます。内服期間は1-2年と言われますが、再燃を避けるため自己抗体の低下を十分待ってから減量していく為、もう少し長くかかる印象があります。ただし薬は飲んでいても甲状腺ホルモンが正常範囲に落ち着いていれば一般生活になんら支障をきたすことはありません。

妊娠出産については、まずホルモンを落ち着ける事が優先です。甲状腺機能の亢進が長い間続くと生理不順になったり、妊娠しても流産や早産をおこしたりする危険が高くなります。薬を内服中であっても、ホルモンが落ち着いていればリスクは変わりないとされています。もちろん妊娠発覚後は担当医に連絡し、相談すべきですが、急に治療を中止するようなことは避けるべきです。また出産後にむしろ病状が悪化するケースが見られます。出産後は大変な時期ですが、治療をおろそかにしてはいけません。
副作用はどんな薬でもありますが、代表的なものはかゆみ・皮疹です。多くは内服開始後2週間以内におきます。ですから当院では薬の効果判定も含めて1ヶ月の間に1-2回の採血検査をするようにしています。かゆみ・皮疹は1割くらいの人に起こるといわれています。程度は人により、アレルギー薬を併用すると落ち着く人もいますし、また薬を変更しなければならない人もいます。また稀ですが重篤化しかねないものに顆粒球減少があります。白血球のなかの顆粒球という細菌を殺す細胞がなくなってしまう副作用です。頻度は200〜500人に1人です。薬を飲み始めてから2週間から3ヶ月以内に起こります。これは非常に危険な副作用で、放置していると命にかかわることもあります。細菌を殺す細胞がなくなってしまう為、簡単に感染をおこしてしまい、重症化します。早期症状は咽頭炎と高熱ですので、内服後早いうちにこうした症状が出た場合は放置しないようにしなければいけません。血液検査で顆粒球の数を調べればすぐに診断できます。

外科治療

甲状腺が非常に大きい場合、特に圧迫症状をきたしたり、しこりを合併したりしている場合、薬が効かないまたは副作用で使えない場合に外科治療の適応となります。甲状腺自体が非常に大きいと、内服治療にも限界があります。また短期的に治療効果を希望する方、定期通院が困難な方も適応になります。適度に甲状腺を切除できれば、内服薬もなく落ち着きますが、ちょうどいい切除量を術前に計算するのは困難で、最近では全摘出する事が多いようです。全摘出すると甲状腺ホルモンは出なくなり、甲状腺ホルモン剤を生涯内服する事になりますが、亢進症の時と違い、一旦内服量が決まればその後は微調整で済む事が多いため、管理は容易になります。

放射線治療

薬が効かないまたは副作用で使えない場合にこの治療が選択される事が多いようです。
放射性ヨードを服用して、甲状腺の細胞の数を減らし、手術同様甲状腺ホルモンの量も減らす治療です。ただ細胞が減り過ぎて低下症になる場合があり、そうした場合は甲状腺ホルモン薬を服用する事になります。
放射線と聞くと不安をもつ方も多いとは思いますが、この治療を選択されるのは妊娠出産の希望のない中高年の方が多いですが、アメリカでは18才以下、妊娠中・授乳中を除いたバセドウ病の7割がこの治療法を選択しているそうです。

橋本病

橋本策(はかる)博士が世界で初めて報告した甲状腺の慢性炎症をきたす疾患です。自己免疫によると言われていますが、詳しい原因はまだわかっていません。20歳代後半以降、とくに30、40歳代が多く、幼児や学童で治療対象になる事は稀です。多くが長い経過をたどって甲状腺の働きが低下してきます。新陳代謝をよくするホルモンが低下してくるため、太る、寒がりになる、顔や体がむくむ、便秘がちになる、元気がないといった症状が出現します。ただしこれらは誰でもそれなりに経験する症状なので、ひどくなってもうつ病や更年期障害と間違われてしまう事があります。

治療は甲状腺ホルモン剤の内服です。治療というよりも、足りなくなった分だけ補充すると考えた方がいいでしょう。薬は人間の甲状腺ホルモンを合成したものですので、副作用はほとんどありません。

甲状腺腫瘍

甲状腺が腫れていると言われた場合、全体的に腫れている場合と一部が腫れている場合があります。いずれにしても超音波検査と血液検査を行って診断する事になります。

全体的に腫れている場合は前述のバセドウ病や橋本病が疑われますが、ただ大きいだけの単純性甲状腺腫というものもあります。また、腺腫様甲状腺腫といって甲状腺内にのう胞という水たまり(時にゼリー状)の大小のしこりができるものもあります。
一部が腫れている場合は、甲状腺内に腫瘍ができている事になります。超音波で良悪性の区別はある程度つきますが、悪性の可能性が少しでもある場合は、更なる検査として穿刺細胞診が必要です。当院ではその場合は専門施設に紹介しています。

1. 良性腫瘍 甲状腺のう胞・結節性甲状腺腫・腺腫様甲状腺腫・濾胞腺腫
サイズが大きい、または大きくなってきている、超音波画像で一部悪性が疑われる場合は二次検査をすべきです。良性との診断がつけば、6ヵ月~1年に一度のエコー検査で十分です。
2. 悪性腫瘍 甲状腺がん・悪性リンパ腫
手術や化学療法が必要です。甲状腺がんの多くは進行が遅いタイプ(少ないですが進行の非常に速いタイプもあります)ですので、患者さん本人に告知し、手術によって摘出します。発覚時点で周囲臓器への浸潤がなければその後の経過は良好であることがほとんどです。いずれにせよ高次の病院に紹介の上治療していただいています。
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